こんにちは。所長の山本誉です。
今年も残すところ、今日一日になりました。
皆様は、大晦日の夜をどのようにお過ごしでしょうか? 今年は、新型コロナで本当に大変な一年でしたね。
来年は、社会全体、そして皆様にとって良い年になるよう祈念するばかりです。 さて、今回は、「運転資本」の話からさらに進んで、 「現金循環日数(CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル)」
という指標の考え方について、お話させていただきたいと思います。
前回の運転資本の減らし方で述べた、「①売上債権を減らすか、棚卸資産を減らすか、仕入債務を増やす」というのは、「大きなロットの商品の掛売り、在庫、掛仕入」を減らすという意味で考えるとわかりやすいと思います。
それに対して、「②売上債権の回収サイトを早めて、仕入債務の支払いサイトを延ばす」というのは、逆に、小さなロットの商品の売掛金回収サイトや在庫販売サイト早めつつ、買掛金の支払サイトを遅くして、その上で、「商品の売買回数を増やす」という意味で考えると、①とは違った捉え方ができます。
「資金化のプロセス」にのっとって、お金を小ロットでグルグル回して、利益をどんどん「雪だるま式」に蓄積していくことで、少ない資本でも、大きな資金を生み出すことができるのです。
逆に、それができていない企業は、会社に資金が残らないことになります。
この資金化プロセスの回転状態を示すために用いられる財務指標が、 「現金循環日数(CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル)」と呼ばれる指標です。
CCCは、次の式で計算します。
CCC = ①売上債権回転日数+②棚卸資産回転日数-③仕入債務回転日数
ここで、
①売上債権回転日数 = (売掛金+受取手形+割引手形)÷1日当たりの売上高
②棚卸資産回転日数 = 棚卸資産÷1日当たりの売上原価
③仕入債務回転日数 = 仕入債務(買掛金+支払手形)÷1日当たりの売上原価
となります、 それでは、上記CCCについて説明していくこととします。
(1) 売上債権回転日数
売上債権回転日数とは、売上債権が何日で現金として回収されるのかを表す日数のことであり、売上債権を1日当たりの売上高(売上高÷365日)で割って計算し、受取手形の中に割引手形があれば、それも売上債権に含めて計算します。
言い換えれば、この式は、現金が売上債権として留まっている日数を表しています。
たとえば、年間売上高が730億円の企業で、期末日の売上債権が120億円、年間の営業日数が365日とすると、
売上債権回転日数 = 売上債権120億円÷(売上高730億円÷365日) = 60日
つまり、売上債権は60日で現金回収されるとみなすのです。売上債権回転日数が短いほど、滞留している売上債権が現金回収されるスピードは早くなり、運転資本が少なくて済みます。
(2) 棚卸資産回転日数
次に、棚卸資産回転日数とは、現金が棚卸資産に形を変え、次の売上債権になるまでの日数、つまり、現金→棚卸資産→(売上→)売上債権となるまでの日数を表します。 この日数が少ないほど、運転資本は少なくてすみます。
たとえば、年間売上原価が438億円の企業で、期末日の棚卸資産が60億円、年間の営業日数が365日とすると、
棚卸資産回転日数 = 棚卸資産60億円÷ (売上原価438億円÷365日) = 50日
つまり、現金が棚卸資産となり、さらにそれが販売されて売上債権になるまでの日数は、50日ということになります。
この日数も少ない方が、運転資本は少なくて済みますが、棚卸資産回転日数が短すぎると、「在庫の品切れ」が起こり、販売の機会損失という事態を招く恐れがあるので注意する必要があります。
(3) 仕入債務回転日数
CCCの計算式では、仕入債務回転日数を引き算して日数を計算しますが、その意味は、仕入債務というのは、仕入業者に現金の支払を待ってもらっている状態であり、言い換えれば、仕入業者から現金を借入している状態といえます。
したがって、この日数は長いほど運転資本は少なくて済むため、CCCの計算上、引き算して計算します。 たとえば、年間売上原価が438億円の企業で、期末日の仕入債務が50億円、年間の営業日数が365日とすると、
仕入債務回転日数 = 仕入債務50億円÷(売上原価438億円÷365日) =41日(切捨)
つまり、仕入債務は41日後に現金で支出されるということになります。
仕入債務回転日数は長いほど、仕入債務の現金支払までの期間が長くなるため、運転資本が少なくて済むということになります。
さて、CCC(現金循環日数)という指標についてみてきました。少し難しかったでしょうか?笑 しかし、指標の考え方そのものは難しくないと思います。じっくりお考えください。 ところで、CCCは、「稼ぐ力」の指標であるとも言われます。 それは、売上と利益が全く同じ企業であっても、A社が300日、B社が30日であれば、B社はA社の10分の1の運転資本で事業を行うことができる。言い方を換えれば、同じ資本であれば、B社はA社の10倍の事業を行うことができるということなのです。
今年のブログはこれで終わりです。 今年一年、お付き合いいただきありがとうございました。 来年もどうぞよろしくお願いいたします。 皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。
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