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執筆者の写真Homare Yamamoto

事業承継の進め方㉜ 事業計画の策定6

こんにちは。所長の山本誉です。

今回のブログでは、事業承継、経営改善のために策定した「事業計画」を、

外部に説明し、評価を受ける場合のポイントについて説明したいと思います。



5.事業計画の外部評価

今後の経営方針、事業計画およびアクションプランの具体的内容が固まり、

事業計画案を策定したら「事業計画案」として、社内や取引先、金融機関等に説明します。


とくに、取引先や金融機関から何らかの支援(資金調達、返済猶予、支払条件の変更等)を

受けるための「事業計画」であれば、最終的に取引先や金融機関の合意を取り付ける

必要があります。


また、取引先や金融機関から支援を受けるためには、事業計画案を策定した段階で

取引先や金融機関に説明し、意見を求めながら修正を加えるという作業を繰り返し行う

必要が生じます。


この過程で、取引先や金融機関が事業計画書を見る視点は、

①事業計画(とくに損益計画)の合理性・実現可能性

②金融機関別借入金返済計画の返済額


です。それぞれ以下に詳述していきたいと思います。



(1)事業計画の実現可能性

取引先や金融機関は、企業が策定した事業計画が、合理的かつ実現可能な計画かどうかを

確認するとともに、さらに事業計画策定前提としての「損益計画」が合理的で実現可能

なのかどうかを確認します。


損益計画が「絵に描いた餅」であり、単なる「数字のつじつま合わせ」をしたような

ものであれば、当然、取引先や金融機関の理解は得られません。



「数字のつじつま合わせ」で策定された損益計画の例としてよくあるのが、


「売上毎年5%アップ、原価率毎年1%ダウン、販管費毎年2%ダウンを目指して

努力します」


といった類の、数字だけが先行して具体策の乏しい、

漠然としたアクションプランにより策定された計画です。


例えば、具体的なアクションプランが、

「売上はHPの活用により毎年5%アップ、原価率は仕入先との交渉により

毎年1%ダウン、販管費は経費の全社的な節約運動により毎年2%ダウンを図ります」

といったような損益計画です。


私の経験上、取引先や金融機関は損益計画の数字を非常に保守的に見る傾向があります。

つまり、「売上はHPの活用により毎年5%アップ」という具体策を掲げても、

HPを活用して売上が毎年5%アップするかどうかは実際やってみなければわかりません。


これが例えば、

「3年前からHPを活用しており、その結果、過去3年間で売上が毎年5%アップした」

という実績を伴っていれば金融機関の見方も肯定的に変わるでしょう。


しかし、これまでに活用したことのないHPを導入して、今後売上を5%アップしよう、

というのは、ある意味で「賭け」ともいうべき行為であり、

本当に売上が5%アップするかどうかは実際のところやってみなければわかりません。


そのような不確定で漠然としたアクションプランに基づいて策定された損益計画は、

合理性がなく、実現可能性が乏しいとみなされます。



それとは逆に、

「4人いる管理部門のうち1名を削減し、人件費を年間500万円削減します」

といった合理性のある実現可能な具体策に基づいた損益計画は、取引先や金融機関に

受け入れられやすのです。


なぜなら、経営者が、管理部門の1名を削減すると決定すれば、

確実にその1名分の人件費が削減できるからです。


このような、損益計画に対する取引先や金融機関の保守的な見方に鑑みれば、

不確定で漠然としたアクションプランに基づく売上拡大に重点をおいた損益計画よりも、

会社で意思決定すればすぐに実現可能な、経費削減に重点をおいた、

具体性のある損益計画のほうが理解を得やすいのです。



ただし、売上拡大に実現かつ具体的なアクションプランが伴っており、

数字に対する合理的な説明ができれば、当然話は別です。


むしろ、損益計画の3年目以降、つまり中長期的には、合理的かつ実現可能で、

具体的な売上拡大策を検討して織り込まなければ、

事業の将来性がないものとして事業支援に消極的になる可能性があります。


こうした取引先や金融機関の見方に配慮しつつ、合理的かつ実現可能で、

具体的なアクションプランを伴った損益計画が策定され、

それに伴う事業計画が策定されなければならないのです。



(2)金融機関別借入金返済計画の返済額

複数の金融機関に対して金融支援を求めるための事業計画(経営改善計画)である場合、

損益計画の合理性・実現可能性とともに、各金融機関への事業計画説明過程で、

調整が必要となることが多いのは、各金融機関への返済額です。


金融機関からの借入に際し、担保提供や債務保証を行った場合、借入金の返済が、

当初の約定どおりになされなければ「期限の利益」を喪失し、金融機関は、

債権(貸付金)回収のため、担保権の実行や保証債務の履行を求める権利を得ます。


その一方、担保権の実行や保証債務の履行という法的手段によって債権を回収するよりも、

事業計画に基づく返済計画にしたがって債権回収を図ることの方に「経済的な合理性」

あると判断すれば、当該返済計画による債権回収を選択することとなるのです。


ここでも重要となるのは、事業計画が、「合理的かつ実現可能」かどうかということです。


金融機関での返済計画においてさらに問題となるのが、各金融機関への返済金額の

決定方法です。


原則的には、本章第3項で述べた「残高プロラタ方式」によって各金融機関への返済額を

決定しますが、担保を有する金融機関と担保を持たない金融機関等との間で、

債権回収のスタンスに相違が起きる場合があります。


このような場合には、各金融機関を集めて「バンクミーティング」を開き、

返済額や回収方法について妥協点を見出すか、それでも各金融機関の調整が得られない

場合には、


「中小企業再生支援協議会」


に依頼して、各金融機関の調整を図ってもらうこととなります。


いずれにしても、外部評価に耐えうる事業計画の策定のポイントは、

「合理的かつ実現可能」な事業計画を策定することであり、

それこそが重要なポイントなのです。 【お知らせ】

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